物心ついた時からお好み焼きが好きだった。

家にお客さんが来ると母は決まってホットプレートを出し、それを振る舞うのだ。
お好み焼きの粉にすった長芋と卵と少しだけ牛乳を加え、水でといて生地を作るのが私の役割だった。
そこに母がエビやイカなどのシーフードを入れ最後に千切りしたキャベツを山盛りに乗っけてそれをかき混ぜた。
そんなにキャベツを入れたらその味しかしなくなる ! と、慌てて母を止めたことがあったが
「野菜は嵩が減るから大丈夫」と簡単にあしらわれた。
その言葉の通り、焼いてしまえばさっきまで山盛だったキャベツはそれなりに嵩を減らし、ふっくらと仕上がっていた。
そこにソースとマヨネーズ、鰹節をかける。
あっつあつのをふぅふぅしながら食べるのだ。
キャベツの甘みや、時々口に広がる海鮮の塩気と出汁の風味を目をつぶりながら味わう。
私にとって至福の瞬間。
大人になると、そこにビールのおまけがついてきた。
最初の一口目は「ぷはぁーっ!」と大きく豪快に。
近畿地方の営業担当になったときは本場のお好み焼きが食べれるとひとりニンマリとしたものだ。
それだけじゃない。
たこ焼きだって。
初めて近畿を営業した時は、ランチにたこ焼き、ディナーに、お好み焼きのダブル攻めだった。

お好み焼き画像-4

しかしある人はこんなことを言った。
「お好み焼きって、ソースとマヨネーズの味でしょ?」
な、な、なにを…なんてことをおっしゃるのでしょう。
一瞬信じがたい言葉だったが、思い返してみると色んなお好み焼き屋を訪れたが、まずいお好み焼きを食べたことがなかった。
どれもソースもマヨネーズもかかっている。
その節もあるのだろうか。
少々疑わしく思っている頃出会ってしまった。

その店は道外のとある街にあった。
コンサートの前日、今日の夕食は何にする?と、
ホテルの近場にある食べ物屋を探し数件の候補が上がる。
この中にお好み焼きがあれば私はすかさずそれを希望する。
そして一件のお好み焼き屋を見つけた。

まずは覗いてみようと店に向かうと、提灯はついているのに、カーテンが全て閉まっている。
恐る恐る戸を開けるとカウンターに男性が1人テレビを観ながら瓶ビールを飲んでいた。
カウンターの向こうには、ガリガリで目付きの鋭いおばちゃんがいた。
「あの~7人なんですけど入れますか?」と聞くと
「7人!?」と怪訝な顔をしたので、「やっぱり大丈夫です」と、すぐに退散した。
別の店で夕食を済ませホテルに戻る時またその店の前を通ると
店の小さな小窓からじっとこちらを見つめる視線が…。
あのおばちゃんだった。
「ぎやぁ~ っ!!」叫びたい気持ちを一心にこらえ部屋に戻った。
翌日、コンサート終了後、私とダル君は前日と同じホテルに滞在した。
他のメンバーは飛行機で一足先に北海道に
帰らなければならず、二人で夕食を摂ることに。
その時頭をよぎった。
あの店に行ってみようかな。
ものすごく恐ろしいのだが、もしかするととんでもなく美味しいお好み焼きが食べれるかもしれない。
おばちゃんが怖いからといってここでお好み焼きを諦めては女が廃る。
なぁに、失敗しても話のネタになるじゃないか と
思いきって再び戸を開けた。

おばちゃんは笑顔で迎えてくれた。
「あら、昨日の子やろ?」
なんて感動的な瞬間だっただろう。
ガリガリで目付きの鋭いおばちゃんの笑顔は歯茎むき出しで、更に奇妙さを増したことは間違いないのだが、
それはさて置き、前日恐ろしく思ったことを反省した。
きっとお好み焼きも美味しいはず。
そう思って注文した。

その期待は無惨に外れた。
美味しくなかったのである。
詳しくは省略。
しかし、しっかりソースとマヨネーズはかかっていたから、
やっぱりお好み焼きの味の決め手はソースとマヨネーズじゃない。

来月から関西ツアーが始まる。
きっと一度は美味しいお好み焼きにありつけるはず♪
今から調べておくとしよう。
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