バンコクにいるBOSSからメッセージが届く。
『ステラプレイス レイトショー21時。』

実はオイラ、上顎は強いんですが、
映画館恐怖症でして…
今から20年程前に映画館に行った時、『暗所・閉所・他人』
という状況に耐え切れず、トイレでずっと吐いてた記憶あり。
逃げ場のない環境がダメみたいでして…それから映画という
ものは、世の中がその映画を忘れかけている頃にレンタル
して鑑賞するというのが日常でした。が。
もしかしたら、今ならイケるのではなかろうか…。
結果から言うといけました。克服するって最高。

チエと二人、電車に乗り一駅。札幌駅が眩しい。
無駄に高いポップコーンとアイスティーを購入して、いざ
シアターへ。
レイトショーってこともあり、お客さんは10人位しかいない。
ほぼ貸し切り状態。こんなんで経営は成り立つのか心配。
今回の研修タイトルは『グリーンブック』。緑の本だ。
BOSSのメッセージには『帰りにKFCが食いたくなるぞ。』
という妙な一文が。真相を確かめなければ。

一流の黒人ピアニスト『ドン・シャーリー』は、
ちょっぴり下品で頼りがいのあるイタリア系アメリカ人
『トニー』を運転手としてスカウトし、2カ月間
特に差別の色濃いアメリカ南部でのツアーを決行する。
1936年から1966年まで毎年出版されていたという
黒人用旅行ガイドブック『グリーンブック』を頼りに…。

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舞台は1962年。『ジム・クロウ法』(主に黒人に対して
公共施設の利用を禁止制限した、アメリカ南部の州法)
の真っただ中、敢えてその土地へツアーに行こうと決めた
ドンの気持ちが終始オイラの脳を支配する。
華やかなステージを降りれば、同じトイレも使えず、
同じレストランで食事も出来ず、試着すらも出来ず、
勿論宿も…。警察にも乱暴に扱われ、バーに行けばリンチ
をくらい、夜の街を歩くことも許されない。
それでもドンは終始ただひたすらに耐える。
『黒人でも白人でも人間でもない私は一体なんだという
のだっ!!』という本音は、心臓が止まるかと思った。

移動の車中、バックミラーに映るドンがいつもどこか寂しそう
であることを感じていたトニーが、ケンタッキー州に着いた時 
『ケンタッキーのケンタッキーだぜ~っ!!』と
うんまそ~に食べるんだけど、とにかく品位を大切にしている
ドン。だけどいやいやながらも最後にはほおばっている。
美味しそうに。硬くなった心が溶ける瞬間。

アメリカの『リアル』に目を背けず、自らその問題へ
向かっていくドン。
ドンは音楽を通して、『自分』に血を巡らせていったんだな…。
たまたまその時代に生まれたばっかりに、差別が才能に圧を
かける。それでも、そんな時代でも『自分にしか出来ないこと』
を貫いた。

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1963年、キング牧師が、『I have a dream』と叫び、
『全ての人間は平等である』と訴えた。
翌1964年、今からたったの55年前、やっと黒人達はみんなと
同じレストランで食事が出来るようになった。
歴史は、自分の想いを貫く者たちが変えていくんだ。

私達は、何を感じ、どう生きるか。
4年前の3月31日に亡くなった中村小太郎さんの言葉も響いて
くるなぁ。『夢は逃げない』。色々考えてみよう。
ケンタッキーフライドチキンを食べながら。