早いものでもう十月が終わろうとしている。
誰が数えても、どう頑張って数え直しても
あと二カ月で今年も終わろうとしている。
「寒くなってきましたねぇ」
「一年なんてあっという間ですよねぇ」
なんていう挨拶が定番としてあちこちで交わされ
スーパーやデパ地下では、マスク越しでも鼻を
刺激するほどの防虫剤の匂いをまとわせた秋冬ものの
コートを召したご婦人に必ずといっていいほど遭遇
する、今はそんな季節。
降り積む雪と凍える寒さが手招きしている、
そんな季節。

…とまぁ、こんな風に書くとどんよりとした空気が
流れそうだけど、長い期間雪に覆われる冬を迎える
北国にとって この時期は大切なものかもしれない。
と最近思うようになった。
半袖、裸足でも過ごせるような秋の始めから一気に
真冬になってしまうと心身のバランスが崩れてしまう。
一足飛びに行事が目白押しの慌ただしい師走を
迎えると何かしら大切なことを取りこぼしてしまい
そうだ。

全くの主観で申し訳ないのだが、以前は『11月』と
いう月はあまり好きではなかった。
中途半端な寒さがかえって身にこたえ、さりとて
記憶なく過ぎ去っていく月---そんなイメージ。
けれども、せっかちで勇み足にもなりやすい私にとって
大事の前の心構えや下準備の大切さを教えてくれるのが
11月という月だと思えるようになった。
コロナ禍の自粛生活の中で いつもより季節を肌で
感じる事がすくなかった分、時の移ろいについて
考える時間が増えたせいかもしれない。
今は、大好きな真冬になる前のこの時期をいつもよりも
丁寧に過ごしてみたいと思っている。

さて、11月に入ると歌旅座は東北、そして四国九州へと
長い長いツアーに出向く。
メンバーの中には旅先での営業も含めると1カ月以上
戻らないものもいる。
旅に出てこそなんぼ、の歌旅座。
このツアーを前に まるで水を得たセイウチ・トド・
鉄砲魚・ウツボのように長い旅の準備に皆生き生きと
している。
身体はかなりしんどいだろうけど、それを凌駕する
ほどの心の充実が得られますようにと祈るばかりだ。

皆が旅先で頑張っている間、留守番部隊はいつものように
大根を干し、赤かぶを漬け、たくあんや粕漬け、
赤かぶの甘酢漬けを“美味しくな~れ”の呪文と共に
仕込んで待っていよう。
“いい旅だったよ、いいステージができたよ”という
何よりのお土産話を心待ちにして、駆け足で過ぎていく
11月を楽しんで過ごしてみよう。
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各地で歌旅座を出迎えて下さる方々、
寒さが増す季節の移り目、どうぞご自愛ください。
そして二時間ほどの歌旅座のステージが、ひと時でも
身体の内側を温められますように…と北国から強く
強く祈っております。