歌旅座は今、細かなレコーディングを重ねています。
JUNCOの歌に、コーラス、ギターはこんな雰囲気、バイオリンはどちらのフレーズがいい?
等々、少し録っては聴いてみる、という作業。
これは便利であります、本当に。

先月末、45年の歴史を持つ銀座のレコーディングスタジオ、「音響ハウス」の
ドキュメンタリー映画を観ました。
録音技術の進化により、一堂に会さずとも音楽制作が可能になった今日。
アナログからデジタルへ。そこで語られていた失われたもの、変わらないものは、
人と人の間にも通じるなと思いました。

例えば、誰から届いても、同じ携帯の文字を読むことが当たり前の毎日、
ふと手紙をもらうと、やっぱりなんだか温かい。

手紙と言えば、私も“日ペンの美子ちゃん”世代、当時の雑誌には文通相手募集のページが
必ずありました。
今では考えられませんが、確か住所も載っていましたよね。
知らない人との文通は経験がないですが、何度か転校をした子供時代、
次の町へ行くとしばらく手紙のやり取りをしていました。
本当は好きだったみたいだよ、などと打ち明け話が書かれていると、
子供ながらにその距離を感じた記憶があります。

高校時代は、授業中、おしゃべり代わりに小さなメモ帳を回していました。
他愛ない日々のことが各々の文字で綴られていて、なかなか捨てられない。
今ならLINEを使うのかな。

反省文を書いたこともあります。
当時の師匠から、ちゃんと練習しますという誓いを書いて押印するように、と。
今となっては笑い話ですが、真剣に書きました、東京都港区宛てに。

お礼も謝罪も告白も、伝える基本は手紙でしたが、そのうちそれはメールになり、
LINEになり、目の前の人がどんな字を書くのかわからないことが多くなりました。
なので、「あ、こんなふうに書くんだな」というのを見られた瞬間は、ちょっと嬉しい。
歌旅座の公演アンケートも、メッセージとともに、字と出会う愉しさがあります。

「その人」を感じられる幸せ、大事にしたいですね。
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北海道は三月に入ると、雪景色の中に少しずつ、春が来ます。